2026/09/30
京都の鍼灸師が考える、起立性調節障害と自律神経

「朝、どうしても起き上がれない」
「立ち上がると、くらっとして目の前が暗くなる」
「午前中はぐったりしているのに、午後になると元気になる」
こうした不調は、ご本人にとっても、支えるご家族にとっても、もどかしいものです。とくにお子さんの場合、「気合いが足りない」と誤解されて、つらい思いをすることも少なくありません。
京都で鍼灸の仕事をして21年。こうした「起立性調節障害」に関わる不調のご相談をいただくことがあります。思春期のお子さんに多い一方で、大人にも起こります。
はじめに ― まず、医療機関で相談を
起立性調節障害は、正しい診断と、適切な対応が大切な不調です。気になる症状があるときは、まず小児科や内科などで相談してください。
とくに、
〇失神をくり返す
〇症状が重く日常生活に支障が出ている
〇急に悪化した
といった場合は、早めに受診してください。
お子さんの場合は、学校生活への配慮も含めて、主治医と相談しながら進めることが安心につながります。この記事は、そのうえで、日々の暮らしでできることをまとめたものです。
「怠け」ではなく、体の仕組みの問題
いちばんお伝えしたいのは、これは気持ちの問題でも、なまけているのでもない、ということです。
朝起きられないのも、立ちくらみが起きるのも、本人の意思ではどうにもならない、体の仕組みの問題です。ここを周りが理解してあげるだけで、ご本人の心はずいぶん軽くなります。責めないこと。それが、いちばんの支えになります。
自律神経の「切り替え」がうまくいかない
私たちが立ち上がるとき、血液は重力で下半身にたまろうとします。ふつうは自律神経がすばやく血管を調整し、脳へ血液を届け続けます。この切り替えが一瞬でも遅れると、めまいや立ちくらみが起こります。
東洋医学では、こうした状態の背景に、
〇気虚(ききょ)体を支え、持ち上げるエネルギー(気)の不足。
原因:睡眠不足、疲労、食生活の乱れ、胃腸の弱さ
〇気血両虚(きけつりょうきょ)体を動かすためのエネルギー不足と栄養を全身に届ける血の不足。
原因:胃腸の動きが悪い、睡眠不足、疲労、食生活の乱れ、月経
〇気滞(きたい)生命活動を行うためのエネルギー(気)が停滞してしまっている状態。
原因:ストレス、生活リズムの乱れ、食生活の乱れ、運動不足
つまり、これは体の調整力が一時的に追いついていない状態であって、本人のせいではないのです。
かんたんセルフチェック
当てはまるものが多いほど、自律神経の調整に負担がかかっているサインかもしれません。
□ 朝、起き上がるのがとてもつらい
□ 立ち上がったとき、めまいや立ちくらみが起きる
□ 午前中は不調で、午後から回復してくる
□ 長く立っていると、気分が悪くなる
今日からできる、3つの養生
むずかしいことは必要ありません。今日からできることを、3つだけ。
① 立ち上がるときは、ゆっくりと
急に立つと、血のめぐりが追いつきません。寝た姿勢からは、一度座り、ひと呼吸おいてから立つ。この「ワンクッション」だけで、立ちくらみはずいぶん減ります。
② 水分を、こまめに
水分が不足すると、めぐりはさらに滞りやすくなります。日中はこまめに水分を。塩分も助けになると言われていますが、量は必ず主治医に相談のうえで調整してください。
③ 生活のリズムを、ゆるやかに整える
朝、カーテンを開けて光を浴びる。無理のない範囲で、起きる時間をなるべく一定に。焦らず、少しずつでかまいません。リズムの土台が、自律神経の調整を助けます。
3週間を目安に、あせらず
自律神経の調整力は、一日では整いません。とくに成長期のお子さんの場合、体の発達とともに、時間をかけて落ち着いていくことも多いと言われています。
あせらず、責めず、支えていく。そのなかで、こうした養生を続けると、「朝が少し楽になった」と感じられる日が増えていくかもしれません。
■我慢せず、早めのケアを

経過が気になる、なかなか変わらない、そんなときは、主治医への相談を続けてください。そのうえで、体質から整えていきたいとお考えでしたら、鍼灸という選択肢について、一度ご相談いただければと思います。
起立性調節障害の症状別コラムも参考にしてみてくださいね。

